picturesque music 音のみせる情景vol.1嵯峨絹子インタビュー

嵯峨絹子 見出し
 多彩な音にのる、流麗なメロディを歌うのは芯のしっかりした声。見た目は線の細い、すっきりとした美人。マイペースに演奏活動を重ねながら、自分の音楽を作り込んでいる嵯峨絹子。
 その活動状況はけっして派手なものではない。しかし10年以上に渡り確実に継続して音楽を作り続けている。何を目指して音楽をはじめたのか、そして何を目指しているのか。
 休日の昼下がり、彼女に案内された居心地のよいカフェで話を聞いた。

 

■ライヴごっことかする子供だった

──音楽をはじめたきっかけを聞かせてください

嵯峨 両親はクラシックをやっているので、もともとそっちの道に進もうと思ってたんですよ。小学生のころにピアノを、その後フルートを習ってて、でも中学高校くらいのときに歌がやりたくなったんです。
 ピアノは小学校6年生くらいまでやってたんです、でも先生が怖くてやめちゃって(笑)フルートは高校卒業するちょっと前くらいまで真剣にやってて。でもちょうどそのときに部活でやってたバンドでオーディションに出て、オーディションに出たことでフルートより歌のほうが勝っちゃって。それでフルートの先生にもわたし歌がやりたいです!って言っちゃったんです。

──オーディションに出たバンドはどんなバンドだったんですか?

嵯峨 高校の軽音楽部で結成したバンドで。キーボードボーカル2人とベースっていう変な編成のバンドだったんですけど。横浜スタジアムでのオーディションでした。そのとき全力でやったことが(歌を本格的に志す)きっかけになりました。

──ご家族がクラシック関係者ということですが、ピアノやフルートを習いながら声楽をやったりはしなかったのでしょうか?

嵯峨 声楽は全くやったことないんです。学校の合唱とかで発生練習をやりますよね?あれぐらいしかやったことなくて。歌は「聴き真似」ですね。いろいろなアーティストを聴いて、どういうふうに声だしてるのかなとか研究したりとか。

──どのようなアーティストをコピーされてたのでしょう?

嵯峨 高校のときによく歌っていたのはマライアキャリー。あとは邦楽だと、当時すごいはまってたのは、大黒摩季、あとはDREAMS COME TRUEとか。ああいうふうにパワフルに出したいなと思ってて。CHAGE&ASKAもすごい聴いてました。あとカーペンターズは小さいころからずっと聴いてましたね。

──最初に意識して好きになった音楽はなんですか?

嵯峨 小さいころはアイドルがすごい好きでした。自分のときに流行っていたアイドルは多分一通り聞いていたと思います。なんだろう。そういうひとたちに自分を投影するのがすごい好きでしたね。特にWinkが好きで、なんで笑顔を見せないんだろう?みたいなミステリアスな雰囲気にはまって、なりきって友達と演じたりしていました。
 あ、「SAY YES」(CHAGE&ASKA)が流行っていたときも、小学生でしたけど友達とライヴごっことかしてたんですよ。部屋で懐中電灯を照明に見立てて、アルバムをまるまる1枚流しながら(笑)

──アイドルから邦楽ポップスに入っていったんですね

嵯峨 そうですね。アイドルを見て、それをまねするところから入ってって。アーティストとか聴くようになって。
 やはり両親がクラシックの人たちなので、(家で)オペラとか流れてきて。すごい好きだったわけではないんですけど、割とそういうのは影響しているのかなあと思う。うん。
 あとはコーラスグループとか。WildOrchid(ファーギー、現The Black Eyed Peasが所属していたコーラスグループ)は歌いたい、と思うきっかけになったアーティストですね。ファーストアルバムがすごく好きで。高校のときずっとそれを練習してました。

■ひとりで、頭の中にあるイメージを作り込んでしまう

──バンドでオーディションを受けたところから、歌でいこう、という決意をされたそうですが、ソロで活動するようになったきっかけは?

嵯峨 高校を卒業するまで色々やってたんですけど、わたし自身がグループっていうよりかはひとりでいろいろやりたいという思いが強くなって、事務所も紹介してもらえるっていう話もあったので、卒業してからはひとりでやっています。
 でも事務所もいろいろ変わったりして、難しかったりしたんですけど、今はほんとにフリーなんです。

──複数人でやりたい、とは思いませんか?

嵯峨 今のところどこかのバンドやグループの一員として歌ったりっていう予定はないです。ただ、機会があればチャレンジしてみたいですね。

──曲もご自身で作られますね。作曲をするようになったきっかけはありますか?

嵯峨 自分で曲を作ろうと心から思うきっかけになったアーティストがいて、サラ・マクラクランというアーティストです。ファン、というか精神的に気づかせてくれたというか。
 20歳くらいのときに事務所をやめて曲を作ろうかどうしようかと悩んでいるときに聞いたんです。もともと人に勧められたりしてたんだけど、そのときにたまたま聴く気になって。ライヴCDでしたが、(聴いて)泣き通しました。何いってるのかわかんないんだけど、わーっとくるみたいな。その人の曲というのは歌い上げるかんじでもないし、どっちかっていうと大丈夫だよっていっているような語り掛けるようなかんじで。「わたしもやってみよう」って思って。ライヴも世界観がものすごく好きですね。みせ方とか、飾らずにやるんですけどすごく神秘的な感じの人です。ライヴ映像を見ているとたまにこう会場を映すんですけど、お客さんがすごくキラキラしてて、そうなりたいな、と。

──曲を作るときに使うのはピアノですか?

嵯峨 曲を作るときにはピアノがやっぱり多いですですねえ。
 コードが全然分からないので、音の響きだけで弾いてますね。(自分でコードをつけられないので)譜面はなるべくサポートしてくれる人に書いてもらったりとかしています。
 たまにギターを弾きながら曲ができたりっていうのもあるんですけど、ほぼ、ピアノです。

   

──アレンジもされていますよね。打ち込みで作るそうですが、ベースやドラムなどのリズム楽器のご経験はあるのですか?

嵯峨 ドラムとかベースは高校のとき軽音楽部だったので、遊び程度ではあるんですけど触ったことがあります。
 打ち込みがすごく好きなんだと思う。この曲だったらこういうドラム、こういうベースっていうのがすごい頭の中にばーっとあって、それはなんとなく表現できちゃう。技術とかないんだけど、なんとなくやっちゃう。
 たとえば、前にシェイカー振ってみる?っていわれてやってみたら全然できなかったんですよ。「何?手ぇ痙攣してる?」って言われたくらい。(リズム楽器は)そのくらい苦手で、やっぱり歌うのとは違うんだなあと思いました。

──打ち込みはいつからされているのでしょう?

嵯峨 打ち込みは高校のときのオーディションに出たバンドの子がキーボードの打ち込めるやつをもってたんですよ。そのときはその子が作ってくれて。で、わたしもそういうのがほしいなって思って、ちっちゃいシーケンサーみたいなのを買って、ゴムのキーボードみたいなので打ち込んで。
 しばらくはそれをずーっと使って作って。そこからパソコンにうつって、より本格的というかいろんなことができるようになって。でも遊びながらっていう感覚が強いです。(今でも)そうなんだーと思うようなことばっかり。本当に分からない。

──「分からない」という割にかなり音数の多い、アレンジしていますよね?他のかたの音楽はたくさん聞いていたりしますか?

嵯峨 いや、数はそんなにないですね。でもとくに広くという感じもなく、ただ自分がほんとうに好きなアーティストはすっごい聴く。
 最近はちょっと落ち着いてて、割とみんなさらーっと聴いてるんですけど。ちょっと前はエミリー・シモン(フランスの音響音楽家)というフランスの歌手にはまってました。電子音楽みたいなエレクトロニックな感じの音楽を作り出す人で、音がすごくかっこよくて。あと最近は30seconds to marsとか。

──ご自身でアコースティックギターを持って歌われることが多いですよね?エレクトリックはやろうとは思わない?

嵯峨 いえ、あのー。ゆくゆくはエレクトリックなほうをやりたいなと思って。

──それは...意外です。ばりばりの歪んだギターソロを引いてみたいとかですか?

嵯峨 いえ。本当に漠然としてるんですけど、自分の曲を作るときに割と自分で全部作っちゃうことがおおいんですよ。全部作りこんじゃうんです。こういう音がいいなっていうのが割りと頭の中にあって。ギターだとニュアンス的なものを出しやすいから、そいうのが自分で歌っているときにできたらいいなと思って。引き倒すとかじゃなくて、なんとなく鳴っている、というのをゆくゆくやってみたいんです。
 これとは別に弾き語りができたらいいなとはすごく思っていて、アコースティックギターは練習しています。

■他人にあずけることで「理想以上」をやりたい

──いま、音源を制作されているのですよね?

嵯峨 今回は人と一緒にやろうと思っています。ライヴでサポートギターを弾いてくれている石本大介氏と制作しているところです。 (これまでは自分ひとりで作りこむことが多かったが)本当に、自分が何もやらない状態でメロディだけを作っただけで色づけするのが他の人でと考えたときに、それが成り立てばすごく面白いなと思っていて。
 でもやっぱり癖で割りと作りこんだのを持っていったりすると、これでいいじゃんとか言われたりするんですよね...(曲を作るときには音の)イメージがうわーとあるんですけど、自分のは抑えて、なるべくシンプルなところで渡そうとしています。  

──それは自分のイメージをがらっとかえるということではなくて、膨らますイメージですか?

嵯峨 がらっとかえるのももちろんありで、でもなんかこの人の出す音好きだなとか、この人の表現するフレーズいいなってあるじゃないですか。そういうのって割と自分がイメージするものだったりするので。自分の中でできる、理想以上の音楽をやりたいというか。

──想像を超えてくるようなところがほしい?

嵯峨 そうですね。そういうのすごいやりたくて。

■「自分の曲を歌うときは真っ白」

──歌詞はどのようなものに影響を受けていますか?

嵯峨 いろんな部分から影響を受けるんですけど、何か映画を見て、そこから湧き出てくることもあるし。それこそ、友だちのアーティストとかを見てて、全然違う歌詞が浮かんできたりっていうこともあるし。
 よくやるのは、洋楽のアーティストとかききながら、雰囲気だけを見て歌詞を書き出しながら書いて、そこからまた自分で違うメロディをつけたりということですね。

──自分の体験を歌詞にすることは?

嵯峨 ありますあります。結構昔はそれが赤裸々すぎちゃって、それがいいっていう人とそれはちょっとという人に別れちゃったりするくらい、結構赤裸々に書いてましたね。
 最近は、書こうと思えば全然かけないこともないのですが書いてないですね。でも書きたいと思うか思わないか、だけだと思います。

   

──ライヴではカバー曲も歌っていますね。自分で書いた曲を歌うときとカバー曲で違いますか?

嵯峨 特に邦楽のカバーをするときには難しいなって思います。なんだろう、前に「On/Off」っていうカバーアルバム(編注1)を出したことがあって女性アーティストが集まって昔の曲をカバーするっていうのだったんですけど。そのときに初めてすごい難しいなって思いました。アレンジも違うし、昔の曲っていい曲が多いので、自分が歌ってそれを伝えられるのか、オリジナルのよさを崩さないで歌えるか。
 自分の曲を歌うときって割りと真っ白だったりするの。自分から出ているものだからかもしれないけれど。けど他の人の曲を歌うと考えたりするのでけっこう神経質になる。自分の曲が(技術的に)簡単とかそういうわけではなくて。感覚としては真っ白になるかならないか...ですね。人の曲は一回ここ(頭)にきてこう(心に)くる、みたいな。なかなか身体に入れるのが難しい。
 
編注1:
2006年「On/Off~seven colors~」収録 飛鳥涼「はじまりはいつも雨」、チューリップ「青春の影」
2008年「On/Off 3rd season ~seven colors~」収録 鬼束ちひろ「月光」、福山雅治「桜坂」  

   

──今年の活動はどのようになるでしょうか?

嵯峨 今年は新しい音源を出したいと思います。マイペースに作ってますよ。
(5月15日にミニCDリリース、ワンマンライヴが開催されます!詳細はこのページの下のほうを、お申し込み方法は嵯峨絹子さんオフィシャルサイトをご確認ください)

 
 

ライヴチケットお申し込みはこちら 2011/4/22 PICTURESQUE MUSIC Vol.1



関連リンク
>>嵯峨絹子オフィシャルサイト



■嵯峨絹子ミニCDリリース&ワンマンライヴのお知らせ
5/15(日) ミニCDリリースワンマンライブ「kardia(カーディア)」
@渋谷O-nest 6F Bar Space 渋谷区円山町2-3 6F(tel:03-3462-4420)
open 12:00 start 13:00
charge 4200yen(Lunch plate & Drink(アルコールOK)付き) 
※60名限定ライブとなります。(全員お座り頂けます)
チケットのお申し込み、詳細は嵯峨さんオフィシャルサイトまで!





 






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